

美濃国の鮎なれずし
鵜飼屋地区伝承
本格木桶の寒仕込み
岐阜長良川
岐阜城下の鵜飼屋地区には
現在も鵜匠(宮内庁式部職)6人が暮らしています
この地区で伝承される
木桶による鮎の伝統発酵食
「その発酵日数は30日間と短い」

鮓(すし)
生熟れ
製造工程

水揚げ
「結の舟」の鮓の仕込みは天然鮎を水揚げするところから始まります。原材料に使用する天然鮎は産卵に向けて川をくだり始めた落ち鮎です。河原に並ぶ彼岸花の開花が漁の合図。伝統漁法「瀬張網漁(せばりあみりょう)」によって鮮度よく漁獲された鮎の中からオス個体のみを選別します。
下処理
オスのみを使用します。天然鮎のオスは体が錆び始めると魚体表面がザラつき婚姻色が現れます。お腹に抱えている白子と、それに包まれるように萎縮した内臓を取り除きます。白子や内臓は “うるか” へと熟成させます。エラを除去し腹部内側の黒い膜もきれいに洗い流します。


塩漬け
塩漬け期間は20日間。このあとの発酵に30日間を要するため木桶を開ける日を先に定めてから逆算して塩漬け作業に入ります。
塩抜き
よい塩梅まで真水で塩味を抜いていきます。このときの加減は経験ではかります。
右写真)鵜飼屋地区に居を構える先輩川漁師さんのご自宅の台所。
実際にここで熟鮓の製造方法を丁寧に教わってきました。

乾燥
すこし秋風にあて、おもに腹側を乾かします。
この乾かし具合が、後の仕上がりを左右します。

鮎と米飯を詰める
新米を炊きあげ米飯を水で晒します。木桶に丁寧に鮎と米飯を並べながら詰めていきます。1桶におよそ50尾が並びます。

木桶の上面に水をはり重石をする
木桶内部の嫌気状態を保つためには外気と遮断させる必要があります。この役割を水が担います。
木桶上部までひたひたに水をはり重石をすれば、この日から発酵が始まります。
乳酸発酵 - 30日間 -
冷暗所で30日間、鮎の発酵を見守ります。
張った水の蒸発具合をみながら必要に応じて水を足します。
水抜き
発酵から30日後に木桶をひっくり返します。
丸1日ほどかけて木桶内部の水気を抜きます。
木桶びらき

かつて江戸の将軍家に運ばれた鮓は飛脚による夏の5日間発酵です
その街道は「鮎鮨街道」として岐阜町に残されています
しかし現代において、これを再現できる場所は現存しません
晩秋に仕込む30日間発酵の “生熟れ” といわれるこちらの鮓は
最も当時の味にちかいものだと評価されました
年間生産量は木桶5つ分( およそ 250尾 )です
皆さまのお口に合いましたら幸いです
