川漁師の知恵を集結させた「川が主役」のポタジェガーデン
山麓の放棄地に令和から川が流れました。ここは人里です。雄大な景色ひろがる大自然ではありません。そんな人間の生活空間に、地球生態系がもつ自然エネルギーの循環が生まれました。すると驚くことに、水と大地との間でおこなわれたエネルギーの交換が恵みとなって私たちの手元に返ってきてくれました。どうやら、この恵みは時を経るごとに豊かになり私たちの暮らしを潤し続けてくれるようです。
こうした環境を日々の生活空間によびこむためには、古代の土木手法が必要です。なぜならば水を支える生物たちのために数々の仕掛けを水脈下に施す必要があるからです。しかしそれは、効率の良い現代土木で用いられるコンクリートや、防水あるいは耐水シート等ではつくりあげることができません。
令和に生きる現役川漁師が、人里で前例のない川づくりプロジェクトを開始しました。



土地におとずれる空気と水は大地を元気にします
反対に、この流れが停滞すると大地は弱ります
川が主役のポタジェでは天然素材の力をお借りして水脈を形成しています。具体的には河原石、竹、炭、藁、松杭の他、粘土鉱物由来の特殊シートや刃金土などです。水脈に寄り添う多孔質の土壌は菌糸の働きを助けます。これによって通気浸透水脈が機能する豊かな土中環境が構築されます。
結の舟が生みだす川のポタジェガーデンは流れる水が濁ることはありません。湧きでた良質な水は、水際植物や水生昆虫、そして川魚を育みます。そして生き物を通り抜けた水もまた、植物たちの養分吸収作用によって浄化され、土地を再循環したり広い大地へと還っていきます。

ク レソン

ワサビ

マコモ
土地環境に配慮された恒久的持続可能な環境デザイン手法としてパーマカルチャーを採用し、水循環システムにアクアポニックを盛り込んだガーデン事例は国内でも類がないほどに珍しいと評価されました。しかし、プロジェクトの発起人として称賛を受けることになった川漁師・平工顕太郎氏は壇上で以下のメッセージを残しました。
人や社会から評価されるよりも
地球から“ありがとう”と言われたいだけです
僕らが暮らす社会
社会を維持するための経済
そのすべてが地球の生物圏のうえにあることを
どうか忘れないでください







川が主役のポタジェガーデンには出荷を待つ天然の川魚たちが休憩しています。川魚を支える水の中では季節ごとに水生昆虫たちの営みが繰り返され、水際植物によって小魚の繁殖が助けられています。川を見守るように育つのは、自然農法の野菜類や果樹、そしてハーブの仲間たち。さらに草花を住処とする陸生昆虫類や爬虫類。加えてそれらを求めて集う鳥類たちの姿。ここは数々の命が鎖のように繋がり、網目のように広がっていく場所です。
カワセミがホバリングする朝があれば、ホタルが舞う夜もあります。
四季折々、風土由来の恵みに出会える川漁師のポタジェガーデンは今後もこの土地で進化を続けてまいります。

川のポタジェ記録
令和7年 春分から
弥生
- 草木弥や生ひ茂る月 -
(くさきいやおいしげるつき)
春分(しゅんぶん)
山茶花 ひらひら、椿 ポトポト。いよいよ春にバトンが渡ります。水際から甘草、真菰、田芹が芽を出し、クレソンはモコモコ成長します。ワサビが青々しく葉の中から蕾をのばし、梅は開花を迎えました。フェンネルが瑞々しく輝き、クリスマスローズも嬉しそうです。
弥生のニホンミツバチ
卯月
- 卯の花月 -
(うのはなづき)
清浄明潔・清明(せいめい)
山笑う季節。桜が咲きツバメが訪れました。水の中ではシジミの子どもが生まれたようです。ワラビの若芽、タラの芽、フキノトウにアスパラガスまで顔を出しています。ワサビの花が咲きました。ヒヤシンス、スノードロップにも春が来ました。ユスラウメが満開です。甘草が短期間でグッと成長し、セージの葉が急に大人っぽくなりました。ローズマリーにも可愛いお花が添えられました。山椒と枇杷が動き始めています。なによりも、田んぼの畦が賑やかです。